1.木造3階建の一般的な注意点について

適切な構造計画を行うことが経済設計につながります。

木造2階建に比べて木造3階建は、階数が一層増えるため、木造部分の設計荷重は単純に.1.5倍(=3層/2層)以上になると考えて頂ければ分かり易いと思います。

木造2階建で書かせて頂いた
1.住宅瑕疵担保保険の基礎構造の取り扱いについて
2.プレカットの柱・梁 及び梁・梁 仕口(=部材取り付け部分)について
3.金物について
4.吹き抜け及び勾配天井について
の内容については、木造3階建では上記のように荷重が大きいため、更に、慎重に構造検討を行なわなければなりません。

残念ながら木造3階建も2階建同様の問題を抱えております。
2.プレカットの柱・梁 及び梁・梁 仕口(=部材取り付け部分)については木造3階建の方が2階建より更に問題が大きいと思います。

私の事務所では、鉄筋コンクリートや鉄骨造のビルや工場の構造設計もさせて頂いております。
これらは、最低基準の建築基準法の内容だけでは、設計出来ない部分も多く、高いグレードで設計される場合が多いのです。

木造3階建は、構造計算の必要の無い木造2階建に1層増やした程度の建物という感覚で設計や確認申請の審査行っている方が結構多いのではないかと思う時があります。
構造設計者としては、とてもそんな簡単に設計してはいけない建物だと思っております。

私が設計させて頂いている中では、木造3階建が設計の仕方によっては、地震や風に対して最も危険な建物だと思います。
実際には、木造の建物は、他の構造の建物に比べて使用材料や金物の種類が多く、その使い方や耐力を考慮しながら詳細な設計が必要です。
計算するプログラムは、見かけ上はOKになっても、その後で細かい設計をする必要があります。
見かけ上の検討で構造計算を終了する人も多いので注意が必要です。

この程度でも申請機関では確認申請をおろすところもあります。
後で建物に問題が発生した際に、このような計算書では対処できない場合が多いのです。
これは、実際に後で問題が発生した建物や増築を希望された建物など、今までの経験した物件で感じていることです。
保管してある構造計算書の内容をチェックさせて頂くと内容に問題があり責任を持てないため検討のしようがなくなるのです。

3階建の建物の1階の駐車場の一部を部屋にしたいというお話がありました。
この建物は、中央に階段室と玄関の吹き抜けがあり、建物中央には全く床剛性(=床の強さ)無く、1階中央の階段と玄関の片側は全て駐車場で、シャッターがつく方向には駐車場内に一枚も耐力壁がありませんでした。

お施主様には、“急いで設計しなくてもいいですよ。”と言って頂いたのですが、両側に建物があり風荷重では直に転倒することはなさそうでしたが、地震では少し大きい程度でも直に転倒しそうでしたので大急ぎで改築と計算外で基礎と耐力壁と梁を追加させて頂きました。
保存してある計算書の内容を検討させて頂いたのですが、全く責任もてる内容ではなかったため、理由をお話して計算外で補強させて頂きました。

屋根は床剛性が非常に小さい仕様の場合が多いのですが、そこに、4倍とか5倍の耐力の大きい耐力壁が並んでいる建物も結構見かけました。
このような場合には、一般の屋根や母屋下がりの屋根(=一般レベルの梁から勾配をつけて下げて配置した屋根)では床剛性を上げるため、屋根の梁の上に直接構造用合板を張ると良いのですが、床剛性を上げる認識がなかったのです。
この施工は難しいため多少コストはかかります。
適切な構造計画を行うことが経済設計につながります。

<次ページへ続く>

【次ページ】2.木造3階建のプレカットの 柱・梁 及び 梁・梁 仕口について

こんにちは、わたしが千田文彦です 建築用語集