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4.吹き抜け及び勾配天井について
特に大きな吹き抜けや勾配天井を希望される場合は、必ず構造検討を…
大きな吹き抜けや勾配天井は、広い空間を確保するのには良いと思いますが、それが大きな構造上の欠陥になる可能性があるため十分な構造検討を行なう必要があります。
特に大きな吹き抜けと階段が一体の空間になっている場合や、大きな吹き抜けと階段室が隣り合っている場合です。
通常の階段の床は、床の強さがとても小さいため階段室も通常の吹き抜けと考えてください。
構造的な工夫をしないと床の強さがほとんど期待出来ないということです。
この吹き抜け空間の両側に配置される各建物や部屋が風や地震による水平荷重に対して同時に同じ変形をするように設計されていれば良いのですが、実際にはそのような設計をされている建物は少ないと思います。
その結果、風や地震の水平力を受けた時に、吹き抜け部分と一般建物部分を繋いでいる構造材(梁等)や仕上げ(外壁等)が損傷することも考えられます。
適正な強度のある梁を配置するのと同時に火打ち梁(直角に交差する梁に斜めに配置して三角形を構成する水平梁)を適正に配置する必要があります。
確認申請に於いては、木造2階建は設計者責任のもとに一定の規模まで構造計算を省略出来ます。
しかしながら、最低限必ず必要壁量の確認や偏芯率が0.3以下に収まることを確認する必要があります。
これらのチェックは、風や地震により建物が受ける水平荷重に対して倒壊しないように検討します。
偏芯率が大きくなるということは、耐力壁筋かい・構造用合板張り壁等)がバランスよく配置されていないか、それとも、建物の一部が2階建のため平屋部分との間で重量のバランスが悪い等が考えられます。
この場合、2階建の重い部分の直下階(=1階)に、耐力壁を適正量配置すればバランスは良くなります。
但し、2階の耐力壁と1階の耐力壁が上下に同じ位置に配置されていれば良いのですが、ずれている場合は、1階の耐力壁に水平力を負担させるために床が強くないと耐力壁は水平荷重を負担できません。
床が水平力を耐力壁まで運ぶ役目をしているからです。
大きな吹き抜けでは、火打ち梁を多少多く配置してもあまり床としては強くなりません。
勾配天井についても火打ち梁や耐力のある構造用合板等を屋根面に配置するなどの工夫が必要な場合も少なくありません。
つまり、床剛性(床の強さ)が小さい場合は、たとえ偏芯率を0.3以下に抑えても床が耐力壁に旨く水平力を運べない強さしかない場合は、偏芯率が0.3より厳しい0.15以下になるように検討する必要があります。
0.15以下に抑えられない場合は、木造2階建でも構造計算が必要になります。
また、0.15以下に抑えることが出来ても、あまりにも床剛性が小さく耐力壁まで床が水平力を運べない場合は構造計算が必要なになります。
従って、特に大きな吹き抜けや勾配天井を希望される場合は、必ず構造検討を行う必ことをお勧めします。
建築基準法は最低の基準なので火打ち梁を配置すれば単純にOKのような書き方をしております。
確認申請機関も設計者責任で申請をおろしますで、確認申請がおりたから安全ということではありません。
心配な方は、申請機関の意匠担当の方ではなく構造担当の方に直接相談されるのが良いと思います。
意匠担当の方では、建築基準法の火打ち梁の配置だけで良いと説明される可能性が大きいからです。ご注意ください。
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